「ぇー、初めまして。今まで怪我でこれませんでしたが、この3年C組に所属させてもらう月夜里 白鬼です。色々とおかしいところも有りますが、以後、よろしくお願いします。」
一般的な自己紹介を言う。おかしな所はないはずだ。元は私も30代40代だから、いささか不安というものがある。今時の中学生の自己紹介などわからんしな。少なくても、問題もないだろうさ。
「じゃあ、質問タイムなー。質問したい奴は手を上げろ。誰を選ぶかは月夜里次第な」
アドルフ教師、さすがに転校生が来たときの心得を持っているか。
「アドルフ先生、私は生徒の名前を誰一人として知らないのですが」
「いや、お前マトウの名前知ってるじゃんかよ」
そういえばそうだった。もっとも、あんな奴はどうでもいいんだが、親の会社が厄介ってだけだし。
さてはて、皆手を上げているな。一部手を上げていないけれど、私のことはどうでもいいのだろう。不干渉を決め込むとは内向的な奴だ。
「ぇー、そこの窓側の坊主の人。」
髪の毛を坊主にしてる人に決めた。おそらくは野球部だろう。
「今何歳ですか」
「常識を考えましょう」
いきなりずいぶんな質問をされだな。私は留年した風に見えるものなのか。そうだとしたらショックだな。
「次は、そこの長い髪の方。ああ、女子の方ですよ」
あの時、黒板消しを弾き返した人の近くの方を選ぶ。
「身長、体重、血液型、特技趣味、それに好きな食べ物と嫌いな食べ物。されに自己判断で長所と短所、あとは性格をお願いします」
ずいぶん多い質問をしてきたな。普通は一人一つだろうに。基本的な質問といえば一つだろうが。
「164cm、58kg、RH-B型、特技は狙撃で趣味はエアガン改造、好きな食べ物は辛いもので嫌いな食べ物は雑な料理、ファーストフードなどのことですね。長所は冷静短所はマイペース、性格はよほどの事が無い限り取り乱すことが無い冷静。と、言ったところでしょうか。ああ、あと流行に疎いですね」
さて、自己解析なんてこのようなものだろうか。他人からみれば短所はもっとあるが、自己判断だし。次の奴は、あいつにすればおそらく後から質問もなくなるだろうな。
「そこの新聞部の方」
「まずは、住所、誕生日、ペットはいるか、好きな行動と小説、あとゲームと漫画とアーティスト。今あげたものの嫌いな奴もよろしく。」
まずは、ってこれだけ言ってまずはなのか。おそらく相当ひどい数になりそうだな。
「住所はプライベートなので黙秘します。誕生日は8月5日。ペットは居ない。順番に料理、人間失格、ゲームはやらない、漫画も見ない、流行に疎いのでアーティストも知りません。嫌いなことにあげると、他人のことを探ること、以降は好きなことと同じです」
ゲームや漫画なんて触ったことも無いのだから仕方が無いだろうに。
「なんか途中から面倒がられた気が。まぁいいや、じゃあ次ね。名前の由来、出身地、座右の銘、好きな人は、付き合ったことはあるか、好きな科目、好きなスポーツ、新聞をよく読むか、家族構成、利き腕、その他」
最期のほうがかなり失礼だ。はっきり言って嫌な奴だな。セクハラトーカーだし、女子なのに。
「名前の由来は知りません、出身地は黙秘、座右の銘は我が道突き進む、好きな人はいない、付き合ったことも無い、好きな科目は理科、好きなスポーツは特になし、新聞は読む、家族構成も黙秘、両利き、その他といわれても例を挙げて頂かないとわかりませんよ」
「そろそろ、いいだろ。授業が始まるしな」
ふむ、アドルフ教師。見事なタイミングです、感謝しますよ。
「じゃあ、小鳥遊の後ろな」
「先生、名前がわからないと言ったと思いましたが」
名前わからんのに言われても困る。しかも、空いてる席が8個近くある。学級閉鎖とか無いのか?
「あー、あの窓側の一番端な。あの長身眼鏡と短身女子の隣な。女子のほうの名前は種島だ」
一番端か、結構気に入っている所だ。後ろに気配があると落ち着かないし。
「分かりました」
一番端まで歩いていく。途中、あのお坊っちゃ眼鏡が足をかけようとしたので、思い切りふんでやる。お坊ちゃん、意外と根性あるな。声出さなかったし。そんなことを思いながら席に着いた。
長身眼鏡の小鳥遊君が話しかけてくる。内容はこれからよろしく、と言ったものだった。次に短身童顔の女子が話しかけてきた。こちらも同じようなものだったが、子供のような挨拶だった。まるで小学2年生くらいの感じだ。
斜め前の女子は一風変わっていた。雰囲気が鋭いし、てか絶対中学生じゃない。殺気があるから一般人なら避けるんじゃないかと思う。もっとも、私にすれば大した物じゃあないんだが。一応挨拶しておくとしよう。
「どうもよろしくお願いします。えっと」
「私の名前は師慈 麻織よ、月夜里君って言ったかしら。面倒だから呼び捨てで良いかしら」
変わった苗字だ、はっきり言ってまず見れるものではないかもしれない。もしかしたら、先祖がミスしたのかもしれない、記入のときとかに。稀に居るよ、そのせいでよく分からない漢字使っている人。
「別にかまいませんよ、師慈さん。呼びたい様に呼んでもらってかまいません。」
「あら、ありがとう。屑」
非道だ。明らかに屑って言われたし、初対面の相手に屑って、人間のやることじゃない。きっと、鬼か悪魔なんだ。完全に屑って言ったよ。犯罪だ、絶対なんかの犯罪だ。屑ってなんだよ。真面目に生きてきたつもりなのに、真っ当ではないけれどね。殺し屋だったし。
「師慈さん。屑は全面的に禁止、というか暴言は全体的に禁止でおねがいしますよ」
「あなたがなんて呼んでも良いって言ったのでしょうが。自分が言ったことをすぐ変えるなんて小さな男ね」
「他人の悪意と性格を察知できたらそんな事言わなかったんですけど、悪意はともかく性格は無理でしょうよ」
だって無理だ。いきなり暴言吐かれるとは思わないし、性格を察知できるのなら暴言禁止をまず最初に言う。絶対言う、幾らなんでも罵られる事を快楽に変える様な人間じゃないんだから。
「ということで暴言禁止を要求します」
「却下」
「え」
「却下よ」
「なんで」
「あんたの不幸は蜜の味よ」
酷い、幾らなんでも酷すぎる。というかよく訴えられなかったな。この頃の親御さんは何かとけち付けたがると言うのに。何かしたのだろうか。
「それとさっきの笑った顔を見ると反吐が出るわ」
「ソコマデデスカ」
あまりの酷さに片言になってしまった。非道だ、絶対悪魔だ。神様が来て助けてくれないだろか。きっと来ないだろうな、神だってこんな奴に近づきたくないし。
最も神なんて信仰なんてしてないし、居たとしても自己中心野郎を敬うなんて考えは存在しない。神なんて全知全能なんだから人と関わりを持つ必要が無い、なのにわざわざ見守られてるとか考えてる奴の意図が分からん。他人の考えに文句をつけるつもりは無いが、見守りたくもないし見守る理由が無い奴が助けてくれるとは思えないしな。
「何を考えているのかしら、この屑は」
「別にあなたには関係の無いことですよ。今の時代に嘆いているだけですから」
事実、私は時代が変わったと嘆いていたのだ。昔は心を狙った攻撃なんて殆ど無かった。今では暴力は無いが、それ以上に酷い精神攻撃が流行っているとは嘆かわしいことである。もっとも私は学校など殆ど通っていなかったので、よく判らないので想像の範囲だが、少なくてもいじめ問題などは起こりはしていなかった。そういう点では暴力沙汰の問題はなくても、自殺者は少ないのだから昔のほうがよかったと考えられるだろう。
「変なことを言うわね。今こんな平和な国で存在できているというのに何が嘆かわしいのかしら」
「そんなことは決まっていますよ。どんな危険な国に行こうが心を傷付けようとする人間が居る国なんて先進国だけですから」
行った事は無いがおそらくは傷付けようと出来るほど、発展途上国は暇ではないのだろう。日本などの御偉い方はどうやって自らの私腹を肥やすか考えているはずだし、子供がゲームを出来る時点で余裕があるといえるだろう。内戦地域などはそのような暇など無いし、子供でさえ生き残ることで精一杯なのだから。
「じゃあ今すぐ日本に生まれてきたかった人たちに死んで償ってきなさい」
「運が無かったとあきらめてください、と言うしかありませんね」
死にたい人間など誰一人と居るものか。所詮死にたい人間など生き物として失格だ。生きたいと思う心は動植物も共通事項だ。植物は脳は無くてもきっと心はあるさ。どっかの県知事も樹の妖精と話したとか言っていたからな。誰がそんなのを県知事にしたんだろうな。
そんなことを考えていると、教室のドアが開く。
「それでは理科の授業を始める」
教師が入ってきたようだ。理科の教師は痩せ気味で黒い髪に混じる白髪が目立っていた。何故だか白衣を身にまとって居るがマッドエキサイティングというよりも、保険の先生と言われれば納得できそうな穏和な感じが目立つ教師であった。
はてさて、私の学力は一体どこまで通じるか計る第一回だ。これで全く分からなかったら馬鹿にされそうだ。特に師慈嬢に。